亀太郎 「先生、FXの本に”3月は決算期のレパトリで円高になりやすい”って書いてあったんですけど。」
亀美 「ほう、それをデータで検証してみたことはあるかの?」
亀太郎 「えっ、検証?本に書いてあるんだから正しいんじゃ…」
亀美 「亀太郎、“常識”を疑うのがデータ分析の第一歩よ。55年分のデータで確かめてみましょう。」
「3月はレパトリで円高」のウソ
亀美 「まずは衝撃の事実から伝えよう。55年間のデータでは、3月は12ヶ月で最も円安になりやすい月じゃ。」
亀太郎 「えっ!!ウソでしょ!?」
亀美 「ウソじゃないわ。データを見て。」
| 月 | 平均日次変化率 | 勝率(円安方向) | 平均レンジ | データ数 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | +0.0149% | 36.22% | 0.7284% | 1,212日 |
| 2月 | +0.0113% | 37.49% | 0.6893% | 1,107日 |
| 3月 | +0.0259% | 37.47% | 0.7213% | 1,257日 |
| 4月 | +0.0006% | 35.40% | 0.6850% | 1,178日 |
| 5月 | +0.0059% | 37.37% | 0.6598% | 1,207日 |
| 6月 | +0.0127% | 36.50% | 0.6814% | 1,178日 |
| 7月 | -0.0077% | 36.43% | 0.6730% | 1,205日 |
| 8月 | -0.0033% | 35.93% | 0.6859% | 1,208日 |
| 9月 | +0.0058% | 38.85% | 0.7079% | 1,166日 |
| 10月 | +0.0006% | 37.43% | 0.6822% | 1,213日 |
| 11月 | +0.0181% | 37.58% | 0.6675% | 1,147日 |
| 12月 | +0.0032% | 35.94% | 0.6106% | 1,191日 |
亀美 「平均日次変化率が+なら円安方向、-なら円高方向じゃ。3月の+0.0259%は12ヶ月中トップ。つまり3月はむしろ円安になりやすいのじゃ。」
亀太郎 「レパトリの常識が完全に逆…!」
亀美 「“レパトリで円高”は一部の年で起きた印象的な事例が記憶に残っているだけ。55年間の統計では支持されないわ。」
円高になりやすいのは7月と8月
亀美 「データが示す”円高の月”は7月(-0.0077%)と8月(-0.0033%)じゃ。12ヶ月で唯一、平均日次変化率がマイナスになる月はこの2つだけ。」
亀太郎 「夏に円高になるんですか?なぜ?」
亀美 「いくつかの仮説があるわ。」
仮説1: 夏季の薄商い
亀美 「欧米のバカンスシーズンで市場参加者が減少し、リスクオフに傾きやすい。流動性が低いから、少しの動きが増幅されるの。」
仮説2: 日本企業の中間期末
亀美 「日本の多くの企業は9月が中間期末。7〜8月にかけて外貨建て資産を円に戻す動きが出やすいという説じゃ。」
仮説3: ポジション調整
亀美 「上半期のトレンドが一服し、利益確定の売りが出やすいタイミングでもあるわ。」
亀太郎 「でも勝率を見ると、7月が36.43%で8月が35.93%…そこまで極端な差じゃないですね。」
亀美 「鋭いのう。そこが大事なポイントじゃ。」
円安になりやすい月トップ3
亀美 「逆に円安方向に強い月を見てみよう。」
| 順位 | 月 | 平均日次変化率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 3月 | +0.0259% | 年度末、期末リバランス |
| 2位 | 11月 | +0.0181% | 米国感謝祭〜年末ラリー |
| 3位 | 1月 | +0.0149% | 新年のリスクオン |
亀美 「3月と11月が目立つわね。3月は年度末の実需、11月は年末にかけてのリスクオンムードが影響していると考えられるわ。」
亀太郎 「12月は+0.0032%でほぼニュートラルですね。」
亀美 「12月はクリスマス休暇で流動性が極端に低下する。平均レンジも0.6106%と12ヶ月で最も小さい。“12月は動かない”──これはデータでも確認できるアノマリーじゃ。」
ボラティリティが高い月
亀太郎 「動きが大きい月はいつですか?」
亀美 「平均レンジで見ると、1月(0.7284%)と3月(0.7213%)が突出しておる。」
亀美 「年初は新たなポジション構築が始まり、3月は年度末の実需が入る。どちらも”方向性が出やすい月”と言えるわ。」
| 区分 | 月 | 平均レンジ | 性質 |
|---|---|---|---|
| ハイボラ | 1月 | 0.7284% | 年初のポジション構築 |
| ハイボラ | 3月 | 0.7213% | 年度末実需 |
| ハイボラ | 9月 | 0.7079% | 中間期末 |
| ローボラ | 12月 | 0.6106% | クリスマス休暇 |
| ローボラ | 5月 | 0.6598% | Sell in May後 |
9月の特異性──最高勝率
亀美 「面白いデータがもう一つ。9月は勝率38.85%で、12ヶ月中最高なの。」
亀太郎 「でも38.85%って、半分以下ですよね?」
亀美 「ドル円の日次変化率は円高方向にわずかに偏っておるから、勝率(円安方向に動く確率)が50%を超えること自体が稀なのじゃ。その中で38.85%は相対的に高い数字じゃ。」
亀美 「9月は平均変化率+0.0058%で円安寄り、かつ平均レンジも0.7079%と大きめ。“動きがあって円安方向に出やすい”月と言えるわ。」
アノマリーだけでは勝てない
亀太郎 「じゃあ、7月に売って3月に買えば儲かるんですか!」
亀美 「それは早計じゃ。」
亀美 「アノマリーの限界を理解しておく必要があるわ。」
限界1: 差が非常に小さい
亀美 「最も円安になりやすい3月でも、平均日次変化率は+0.0259%。1日あたりわずか0.026%じゃ。これで取引コストを賄えるか?」
限界2: 勝率は5割を大きく下回る
亀美 「どの月も勝率は35〜39%の範囲内。つまり、どの月にエントリーしても、日ベースでは円高方向に動く確率の方が高いの。」
限界3: 年によってバラつきが大きい
亀美 「“3月は円安”は55年間の平均であって、個別の年では大きく逆に動くことも当然ある。1995年3月は-3.43%の大幅円高じゃった。」
亀太郎 「じゃあアノマリーって意味ないんですか…?」
亀美 「そうではない。アノマリーは”他のシグナルと組み合わせて使う”ものじゃ。テクニカルやファンダメンタルズの判断と方向が一致したとき、エッジ(優位性)を少し上乗せしてくれる──そういう使い方が正しいのじゃ。」
亀美 「アノマリーを”唯一の根拠”にするのは危険。でも”補助的な判断材料”としてなら十分に有効。それがデータの正しい使い方よ。」
まとめ──月別アノマリー3つのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 1. 3月レパトリ円高はウソ | データでは3月が最も円安方向(+0.0259%/日) |
| 2. 円高月は7月・8月 | 夏場の薄商い・中間期末の影響 |
| 3. アノマリーは補助材料 | 単独では使わず、他の分析と組み合わせる |
亀太郎 「“常識”を疑ってデータで検証する大切さが身に染みました…」
亀美 「データは嘘をつかん。じゃが、データの解釈を誤ると嘘になる。次回は、もう一つの”常識”を検証するぞ。」
次回:「亀太郎、有事の円買いのウソを暴く。」
免責事項: この記事はデータに基づく分析であり、投資助言ではありません。FX取引にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。